霊について考察してみる (2004.11.18)

 霊魂は存在するのかしないのか、という事は少なくとも現在の科学では解明できないし、おそらく今後も解明されないだろう。解明されたらとんでもない事になる。死後の世界があったら怖いという人は、ないと証明されればあっさり死んでしまうだろうし、なかったら怖いという人は、あると証明されれば死んでしまうだろう。

 あったら怖いという人の根拠はこうだ。よっぽど善行を積んだ人間でないと天国には行けない。仏教では虫を殺しても酒を飲んでもいけないことになっている。キリスト教では実際に人を殺すよりも頭の中で殺す方が罪深いとされている。これでは、ほとんどの人は地獄に堕ちることになる。仏教では何千年も地獄から出られないとされている。キリスト教では未来永劫だ。

 なかったら怖いという人は死後の世界を天国だと考えている。つらい現実から解放されて安楽に過ごせると思っている。あるいはあの世での期間を考慮せずにすぐに転生するものと考えているのか。いずれにせよ、死んだらすべて終わってなくなってしまうのはとても怖いことだと考えている。

 意識は、脳細胞のつながり具合とその中を流れる電気信号によって生まれる。脳の活動が停止すれば意識もなくなるはずだ。だが霊魂が存在して死んでも意識が残るとすれば、脳細胞のつながりと電気信号がなんらかの形でコピーされるということだ。それが霊的エネルギーと言われているものなのだろう。あるいは霊的エネルギーのコピーが脳なのか。また臨死体験をした人の話によると、暗いトンネルを抜けるととても明るい、暖かい場所に出るという。花畑があって親しい人がおいでおいでをしている。
 極楽浄土に行くとお香のいい匂いがして、望めばどんな豪華料理でも出てくるという。

 すると、どうやら五感はすべて存在すると考えてよさそうだ。脳だけでなく目や耳や口、鼻のコピーも存在するのか? 何かに触ることができるのであれば手も存在するし、どこかに立つ、あるいはすわることができるのであれば足も存在する。極楽浄土で豪華料理を食えるのであれば内臓も存在する。しかしこれらの五感は脳に電気刺激を与えるだけでも感じられるから、脳のコピーだけあれば十分ということになる。

 だが、脳だけの幽霊というのは聞いたことがない。また、臨死体験ではおいでおいでをする人の姿が見えるし、おそらく向こうからもこちらの姿が見えているだろう。つまり、脳だけでなく体全体のコピーが霊的エネルギーとしてあるということだ。

 往生要集によれば、地獄はこの世の地下1千由旬(ゆじゅん。1由旬は約40里)にあって、縦横1万由旬に及ぶという。1里は約4キロメートルだから、地下16万キロ、縦横それぞれ160万キロだ。ちなみに地球の半径は約6378キロメートルである。普通に考えて、「この世の地下」といえば地球の地下のことだが、このように現実には存在しえない空間にある。あの世だから当たり前か。それとも、源信が地球の半径を知っていれば、「この世の地下十由旬」くらいに書いただろうか。すべては源信の想像にすぎないのか? (現在まで伝えられている地獄は、源信が往生要集で書いたものがモデルとなっている。)

 何事も「ある」と証明するより「ない」と証明する方が難しいのだそうだ。「ある」と証明するには証拠を1つ挙げればいいが、「ない」と証明するにはすべての証拠を否定しなければならない。死後の世界があるという証拠はないが、根拠はいくつかある。臨死体験をした人の証言は似通っている。これを単なる偶然として片付けるのは無理がある。心霊写真のほとんどはカメラの機構や目の錯覚で説明できるが、中には説明できないものもある。幽霊目撃談のすべてが嘘であるとするのは無理がある。前世の記憶を思い出した人がいて、彼らが証言したことが実際に過去に起こっていた事例がいくつか見つかっている。

 これらを科学的に否定することはできないが、こじつけで否定することはできる。臨死体験については例えばこうだ。死ぬ時に視界が暗くなっていく。当然体温も下がるだろう。それが生き返る時に明るくなる。たとえまぶたを閉じていても、病室内の明かりは感じる。体温も上がるだろう。それで、暗い所を通って明るくて暖かい場所に出る、というイメージが脳に浮かぶ。心霊写真のうち説明のつかないものは、説明がつかないだけであってただちに本物の心霊であるとは断言できない。幽霊目撃談はすべて嘘か錯覚か幻覚である。前世の記憶についてはこの間アンビリーバボーでやっていた。以前に見たことがあるもの、読んだことがあるものを、前世の記憶として誤認しているというのだ。

 と、ごちゃごちゃ考えてみたが結局分かるわけもなく、どっちにしても後悔しないようにせいいっぱい明るくさわやかに生きましょうよ、というお決まりの結論となるのであった。


[目次へ][前へ][次へ] inserted by FC2 system