ほん怖に突っ込む (2005.3.8)

「ほんとにあった怖い話」セカンドシーズン最終回を見た。ひどいね、袴田吉彦の話。見ていない人のために書くと、ドラマの撮影のためにロケ地に赴いた袴田吉彦が、スタッフの一人、坂本さんに「2番目のトンネルに気をつけろ」と忠告される。何かの用事で自転車で出かける袴田吉彦。2番目のトンネルに入ると、自転車のチェーンが外れてしまうのである。映像では、落ち武者が後ろから袴田に近づいてくる。彼はまったく気づかない。すぐ近くまで来た時チェーンが直り、袴田は走り去るのだ。帰って来て彼は坂本さんに体が重い旨を伝える。「そりゃそうだよ」と答える坂本氏。映像では、袴田の後ろに落ち武者がたくさんいる。坂本さんがお払いをして、彼は事なきを得るのだ。

 何が言いたいかというと、袴田吉彦自身は落ち武者を見ていないのである。彼が体験したのはこうだ。坂本氏に「2番目のトンネルに気をつけろ」と言われる。2番目のトンネルに入ると、自転車のチェーンが外れる。帰ってくると、体が重くなったように感じる。で、坂本氏がお払いをする。これだけである。

 映像を見る限り、坂本氏は「そりゃそうだよ」としか言っていない。「お前の後ろに落ち武者がいるぞ」とは言っていないのだ。袴田の話と地元に伝わる落ち武者伝説を元に、ほん怖スタッフが勝手に作り上げたイメージだとしか思えない。これは想像だが、坂本氏の話を聞いた上で問題の場所でチェーンが外れたので、袴田吉彦は暗示にかかってしまい体が重くなったように感じたのではないか。

 その次の話は、私がこれまでに調べてきたことに反するものであった。授業中にチューインガムをくちゃくちゃやっている女生徒がいる。反抗期にある女生徒だ。ある日先生の夢の中に女生徒のおばあちゃんが現れ、「孫のことをよろしくお願いします」みたいなことを話す。先生は「バカバカしいと思うかもしれないけどなあ」と言って女生徒にその話をするのだ。彼女を改心させるために。なお、私は録画したわけではないので、記憶に頼って書いている。だいたいそんな話だったと思う。

 それだけならいい話だ。問題は、おばあちゃんがいた場所である。なんと、賽の河原らしき場所にいるのだ。賽の河原は堕胎された子が石を積むための場所である。おばあさんは天国にも行かず地獄にも行かず、なぜそんな所にいるのだろう?

 あと心霊写真がいくつか紹介されていたが、この間心霊写真について調べた私にとってはどれも嘘臭い。覚えているのは2つで、1つは腰から下がない女性である。これは、思いっきり背を曲げていたのではないかと思う。

イメージ

 もう一つの写真は、心霊ととれる点が2つある。壁に浮かび出た人の顔と、壁からにょっきりと突き出た腕である。顔はただのしみだし、これを顔とするのは相当強引なので問題外だが、腕の方はかなりリアルである。その腕の前に子供の腕がかぶっているので、合成写真だとすると相当凝っている。ただ、こういうことも考えられるのだ。そういうシールだと。普通には売ってなさそうだが、東急ハンズとか、あるいはもっとレア物を扱う店にはあるかもしれない。それとももっと単純に、ポスターの切り抜きを壁に貼り付けたのかもしれない。写真を描画ソフトでいじってプリントして腕を切り抜いたら、もっとリアルに出来そうだ。なぜか霊能力者はインパクトがある腕の方より、壁のしみの方について一生懸命に解説するのだ。カメラもしみばかり映して腕の方はあまり映さない。長時間映すとトリック写真だとばれるからだろうか。私は録画していないので検証のしようがない。近頃のビデオレコーダーはDVDにも録画できるし、一部分を拡大して見ることもできる。録画した方はぜひ検証を。

 今頃になって知ったが、「イワコデジマ」って「マジで怖い」をひっくり返しただけなんだってね。紹介している現象を本当に恐れているのであれば、五字切りなどと称してそんなふざけたことをやっていいのだろうか。芸能人が子供の真似をして「はい、吾郎さん」と言うのも同じである。いわんや子供に幽霊の格好をさせてスタジオにいさせていいのだろうか。本当に恐れているのであれば、そんなおふざけをやって平気なのだろうか。祟られないのか?

 袴田吉彦の話の前に一般投稿者の体験談があった。若者達が廃校に行き、肝試しをする。このシチュエーションって定型パターンだけど、嘘臭いなあ。小池栄子扮する体験者が、ひょんなことから一人だけ残されてしまう。なんと真っ暗な廃校で、トイレに行ってしまうのだ。驚くべき勇気の持ち主だ。電気がつかないだけでも嫌だが、水が流れるかも分からない、トイレットペーパーがあるかも分からない。まあ女性ならティッシュペーパーくらい持っているだろうが。で、待っていた女友達は、なぜか小池栄子を置いてきぼりにしてさっさと行ってしまうのだ。

 トイレから出た小池栄子は浮遊する生首に追い回される。霊能者下ヨシ子によると、水死した女性で、日本人と外国人のハーフだという。「お前見た目で判断してるんとちゃうんか」と思ってしまった。そう言われて見ると、映像の生首はそんなふうに見えるのである。そもそも下ヨシ子は再現VTRを見ただけで、体験者に会ったわけではないと思う。それだけでそこまで分かるなんて、不思議だなあ。

 またその現象につけられた名前がいい。「フライング・ヘッド現象」だそうだ。そのまんまやん! ほん怖にはそのまんまな名前の現象がたくさん出てくる。

 良かったんじゃないの? と思ってしまう。その人は怖い思いをしたくて心霊スポットに行ったんだから。目的を達成できたわけだ。下ヨシ子は「連れて帰ってますね。その人だけじゃなくて、友達全員。たぶんひどいことになっていますよ」なんて言ってる。おいおい、それをなんとかしてあげるのがあなたの役目じゃないのか!

 下ヨシ子はたぶん儲けてないだろうからいいんだが、最近気になるのが細○数○である。伏字にする必要ないのかな。占いだけしておればよいものを、やたらと祖先の霊と子孫の霊を出す。立命館大学の安斎育郎教授は霊現象を否定しようと調査研究しているが、その理由は霊感商法に騙されて財産を持っていかれる人が多いからだ。そんなわけで細○数○は信用すべきではないように思う。この人はすごく儲けている。別にぼったくっているわけではないと思うが、反感を持つ。

 現代人は科学的に考える訓練を受けているはずである。最低でも中学までは義務教育だ。現代人が論理的に考えて当然持つ疑問を細○数○にぶつけると、途端に「地獄に送るわよ」、「あなた卑怯よ」と返される。まあ、「地獄に送る」の方は、屁理屈を言う相手を黙らせるための決まり文句だそうだが。私には屁理屈に思えないのだが。

 どうもこの人はリーディングをやっているだけのように思える。リーディングにはコールド・リーディングとホット・リーディングがある。コールド・リーディングというのは、相手に具体的な質問をすることなく、雑談や、その人の顔や服装といった外観を見るだけで、その人の個人的な情報を引き出すテクニックである。それを拡張して、その人の恋愛や仕事上の悩みなども当ててしまう。「あなたには何か悩みがありますね?」というあれだ。悩みのない人間などいない。ホット・リーディングは前もって相手のことを調べておくやり方だ。「おじいさんは、1985年11月27日に亡くなったのですね」と言われ、それがズバリ当たっていたら誰だってびっくりするだろう。


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