霊の心理学的解明 (2005.4.8)

 この間「霊の物理学的解明」をやったので、こんどは心理学的にはどうなのか調べてみた。

  • 半覚醒状態で見る幻覚
     眠りの深さは4段階に分かれる。寝てから徐々に深くなって1番深いレベル4に達する。そこからまた浅くなって眠ってから90分後に1番浅いレベル1に達する。また深くなって浅くなる、ということを90分毎に繰り返している。睡眠も後半になると、1番深い時でもレベル4には達しない。レベル1の時、確かに眠っているのに、脳波は覚醒に近いパターンを示す。この期間を賦活(ふかつ)睡眠、逆説睡眠、または眼球が急速に動くことからレム(Rapid Eye Movement:REM)睡眠という。この時に夢を見る。
     赤ちゃんは夢を見ている時に体を動かす。大人はレム期に骨格筋が脱力し、夢遊病者以外は夢を見ても体を動かさないようになっている。脳の脱力の命令中枢を人為的に破壊された猫はレム期になると起き上がり、夢の中の獲物を捕らえようとしたり、敵に噛みつこうとするなど夢の中の情景通りに動くのが観察される。
     心身の疲労やストレスが蓄積していたり、睡眠時間が不規則だったりすると、精神はレム睡眠よりもさらに覚醒に近い状態となる。特に入眠時にこれが起こると入眠時幻覚が起こる。頭はほぼ覚醒状態にあるのに筋肉は脱力しているので、金縛りを体験する。この時に幽霊を見る。

  • 感覚遮断による幻覚
     脳が正常な意識を保つためには外界からの入力が必要だ。つまり目で見た情景、耳で聞いた音、手で触った感覚などだ。これらの感覚を遮断すると、脳は現実には存在しない感覚を生み出してでも意識を支えようとする。被験者に外の明暗だけが分かるゴーグルをかけ、耳にはスポンジをつめ、手には覆いをつけるという感覚遮断実験では、早い人で20分後には幻覚を体験する。
     もっと徹底的な感覚遮断を行った実験がある。ジョン・C・リリーの隔離タンクである。このタンクには人間と同じ比重の液体が入っており、温度も体温と同じに保たれている。空気の流れも外界との温度差も、重力さえも感じない。リリーは自身を実験台にし、夢を見ているような状態、トランスに似た状態、神秘的な状態、宗教的悟りが得られた状態を体験するのだ。

 上のように、心理学では動物実験のため猫が犠牲になるので、猫好きの人は心理学者になってはいけない。

 プロフィールには書かなかった(プロフィールを書いた時には思い浮かばなかった)が、私は映画アルタード・ステーツが好きだ。この映画は明らかにジョン・C・リリーの実験をモデルにしている。主人公の科学者は隔離タンクに入り、様々な幻覚を体験する。意識の変性状態(altered states of consciousness)がもたらす変化がやがてのっぴきならないことに。世にも奇妙な物語的な話でとてもよい。

 批評家が「人間を描け」と言い続けたせいだろうか。こういう話はどんどん少なくなっていった。ターミネーターだって1作目は純粋にロボットに追われる恐怖を描いていたはずだ。人間なんて描かなくていいよ。恐怖を描けよ。

 心理学的には、幻覚だとしか言いようがないようだ。物理学的解明の方に書いちゃったこっくりさん(無意識の作用)と情景分析(聴覚の働き)もこっち(心理学的解明)に入るのではあるが。幻覚は何日も絶食しているとか、寝てないとか、LSDをやっているとかいう特殊な状況でなくても、寝る時や感覚遮断された時にも起こりうるのだ。寝床や夜暗くて静かな場所での幽霊目撃談が多いのはそういう事情による。

 すると気になるのは、幻覚はそんなにリアルなのかということだ。幽霊目撃者も臨死体験者も、「今のは現実だった」と思ったはずだ。幻覚と現実との区別がつけば、そういうふうには思わない。

 楽しい体外離脱の有栖さん、忍法金縛りの術の鷹さんは何度も体外離脱を経験しており、それは幻覚だと確信している。お二方とも金縛りの最中に体外離脱する、つまり、レム睡眠時の幻覚である。その内容は現実との区別がつかないほどリアルだが、体外離脱中に見える風景と現実の風景とでは差異があるため幻覚だと分かるのだ(幻覚の部屋にはカレンダーがあるが、実際の部屋にはない、等)。体外離脱、明晰夢、夢は同じ種類のもので、覚醒度が違うだけだという。明晰夢とは夢を見ている最中に「これは夢だ」と気づく状態である。以降夢の内容を自由にコントロールすることができ、何でも好きなことができる。夢はレム睡眠期に見るのですでに覚醒に近い状態だが、さらに意識が明晰になると明晰夢となり、さらに覚醒度が上がるともはや現実との区別がないほどリアルとなり、視覚以外の感覚(聴覚、触覚等)もあり、また自由にどこにでも行けるので体外離脱となるという。現実と区別がつかない情景の中で非現実的な人物を見ればそれは幽霊目撃となる。

 大変頼もしい体験談である。瀕死の状態での体外離脱と同じ種類のものかどうかは別として、重要なのは、幻覚は場合によってはものすごくリアルなものであるということだ。


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