加藤茶にあこがれる (2005.4.27)

 昨日、芸能人の食事から5年後、10年後にどんな病気になっているかを医者が予測する番組をやっていた。で、加藤茶は肉と酒を中心とした食事をしているが、10年後には脳は萎縮し前立腺と肛門は癌になり悲惨なことになるらしい。加藤茶は「自分の食いたいものを食って早死にした方がいいんだ」と言ったが、医者は「でも加藤さん、もがき苦しみながら死ぬのは嫌でしょう?」と諭した。

 本当にそうだろうか。老人はみんな老衰で安らかに死ぬのだろうか。厚生労働省の統計によると、平成15年度の性・年齢階級別にみた60歳以上の人の死因順位(第5位まで)は以下の通りである。

 男性

年齢第1位第2位第3位第4位第5位
60〜64悪性新生物心疾患脳血管疾患自殺不慮の事故
65〜69悪性新生物心疾患脳血管疾患肺炎不慮の事故
70〜74悪性新生物心疾患脳血管疾患肺炎不慮の事故
75〜79悪性新生物心疾患脳血管疾患肺炎不慮の事故
80〜84悪性新生物心疾患脳血管疾患肺炎不慮の事故
85〜89悪性新生物肺炎心疾患脳血管疾患慢性閉塞性肺疾患
90〜肺炎心疾患悪性新生物 脳血管疾患老衰

 女性

年齢第1位第2位第3位第4位第5位
60〜64悪性新生物心疾患脳血管疾患自殺不慮の事故
65〜69悪性新生物心疾患脳血管疾患不慮の事故肺炎
70〜74悪性新生物心疾患脳血管疾患肺炎不慮の事故
75〜79悪性新生物心疾患脳血管疾患肺炎不慮の事故
80〜84悪性新生物心疾患脳血管疾患肺炎不慮の事故
85〜89心疾患悪性新生物脳血管疾患肺炎老衰
90〜心疾患脳血管疾患肺炎悪性新生物老衰

 老衰で死ぬ人はわずかである。みんな癌や、脳や心臓の病気になって病院で菅だらけになってもがき苦しみながら死ぬのだ。ちなみに、死因と推定できる病気が無く、老衰によって自然に生を閉じることを老衰死という。

 加藤茶はスタッフから「野菜も食べた方がいいですよ」と言われたが、「仕事終わって野菜食ったらつまんないぞ。なんのために働いてるのか分からないじゃん」と答えた。どうやら豪快な人のようだ。お笑いをやって、仕事が終わったら高級な肉を食ってビールをたっぷり飲む。どっちみち病院で苦しみながら死ぬのであれば、そういう生き方の方がずっといいではないか。

 あの世があったら、酒をカパカパ飲んだらもうそれだけで地獄に堕ちる。往生要集にもそう書かれているし、丹波哲郎もタバコや酒で命を縮めたらそれは命を粗末にする行為なので地獄に堕ちると言っている。ダンテの神曲では金持ちで美食にふけった者も地獄に堕ちるとされている。

 しかし、あの世がないのであれば、命を縮めることが分かっていても毎日口に入れただけで溶ける肉を食ってビールをたっぷり飲む豪快な生き方の方がずっといいに決まっている。きっと地獄を考え出した人は嫉妬の塊なのだ。

 あの世があると信じる人は、他人のために生きる。よって一番大事なものは愛だ。ないと信じる人は1度きりの人生だから豪快な生き方にあこがれる。しかしそれには先立つものが必要だ。愛は必須ではない。恋愛とかは要るかもしれないが、人によっては楽しく生きられればそれさえも要らないだろう。ましてや赤の他人に無償の奉仕をすることなど考えられない。よって一番大事なものは金だ。

「他人のために生きる」と一言で書いてしまうといかにもいいイメージがあるが、具体的にそれはどういうことかと考えるともうマゾとしか思えない。この他人というのは家族や恋人や友達のことではないだろう。赤の他人も含むのだ。

 まあ、普通の人はどっちかに偏っているわけではなく、あの世はあるともないとも断言できないし、ある時は愛が大事だと思い、ある時は、いや、やっぱり金だよ、と思ったりするのだろう。


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