補講 実行ファイルの作成

 作ったプログラムをそのまんま自分のサイトに置いたり、Vectorに登録したりして配布するわけにはいきません。実行ファイルに変換します。そうすることで、HSPをインストールしていないパソコンでも実行できます。
 ここでは、ABOGADROを例にして実行ファイルの作り方を書いておきます。

 1.実行ファイルを作る

 普通は、必要なファイルを1つのフォルダにまとめ、それを圧縮したものをサイトに置きます。そこで、どこでもいいのでフォルダを1つ作ります。名前は、ゲーム名を連想しやすいものがいいです。ここでは、そのまま"abogadro"とします。

 本講座の、完成したソースファイルがあるフォルダ名はsample20です。その中のファイルを全部abogadroフォルダにコピーします。以降の作業はabogadroフォルダで行います。

 HSPスクリプトエディタでsample20.asを開き、メニューから「HSP」−「実行ファイル自動作成」を選びます。"hsptmp.exe"というコーヒーカップのマークの実行ファイルができます。手作業で作ることもできます。絵のファイル等を隠したい場合は手作業でやって下さい。やり方はHSPのヘルプを参照して下さい。

 これも、ゲーム名を連想しやすい名前の方がいいです。"abogadro.exe"に名前を変更します。

 実行ファイルに変換するとHSPのシステムがなくても実行できると書きましたが、プラグインを使っている場合、そのDLLだけは必要です。実行ファイルと同じフォルダに置きます。そこで、HSPをインストールしたフォルダから"hmm.dll"と"hspext.dll"をabogadroフォルダにコピーします。

 2.アイコンを変える

 実行ファイルのアイコンは好きな絵に変えることができます。もちろんコーヒーカップのままでも構いません。

 絵を変えるには、まずアイコン用の絵のファイルを用意し、それをアイコンファイル(〜.ico)に変換します。そして実行ファイル中に含まれているコーヒーカップのアイコンのデータを、そのアイコンに置換します。

 絵をアイコンファイルに変換するツールはたくさんあります。例えばVectorだと「ライブラリ」→「アミューズメント」→「アイコン」→「アイコン用ユーティリティ」のカテゴリにいろいろありますので、良さそうなのを選んで使って下さい。ここでは、「自機を画面に出す」の所にも書いたALFARを使います。

 ALFARのメニューから「ファイル」−「パレット付きで開く」でabogadroフォルダの中の"samplecg.bmp"を開きます。この中の、左上端にある自機の絵を使うことにします。
  ストックウィンドウ
 自機だけを抜き出すには、「ファイル」−「新規作成/サイズ変更」を選び、幅、高さに32と入力し、「サイズ変更」をクリックします。これで左上端の32×32ドットの領域(つまり自機の絵)だけが残ります。使いたい絵が他の場所にある場合は、左上端にコピーしてから同じように操作すればいいです。

「ファイル」−「名前をつけて保存」を選び、ファイル名はそのままで、「ファイルの種類」を「アイコン(*.ico)」に変えて「保存」をクリックします。
 ストックウィンドウをクリックして透明色を指定するようメッセージが表示されるので、ストックウィンドウの黒い所をクリックします。
「256色」をクリックします。これでアイコンファイル(samplecg.ico)ができます。

 実行ファイルのアイコンデータを書き換えるツールもいろいろありますが、ここではHSPのヘルプで紹介されているKH IconRewrite98を使います。
「ファイル」−「開く」でabogadro.exeを開きます。
「アイコン」−「ストックに追加」でsamplecg.icoをストックに追加します。
 samplecg.icoのアイコンをドラッグしてabogadro.exeのアイコンに重ねると書き換わります。
「ファイル」−「上書き保存」で保存します。

 エクスプローラーのメニューで、「表示」−「最新の情報に更新」を選択するとアイコンの絵が変わります。変わらない場合はパソコンを再起動して下さい。

 3.要らないファイルを削除する

 必要なファイルは実行ファイル、画像ファイル、音声ファイル、DLLです。ソースファイル(〜.as)、実行ファイルを作る時にできた一時ファイル(hsptmp,hsptmp.i,packfile,start.ax)、アイコンファイルは要らないので削除します。アイコンファイルは後でバージョンアップした時のことを考えてどこか別の所にとっておいてもいいかもしれません。

 4.説明書を作る

 説明書のファイル名は特に決まっていませんが、「readme.txt」、「はじめにお読み下さい.txt」等が多いと思います。またテキストファイルとは限らず、HTMLの形式、ヘルプファイル専用の形式で作っている人もいます。
 書く内容も自由ですが、だいたい以下のような項目があればいいのではないかと思います。


 5.フォルダを圧縮する

 abogadroフォルダを圧縮します。たいていの人は圧縮解凍ツールをすでにインストール済みだと思います。.lzh形式か.zip形式にするのが一般的です。


 なお、以上の説明中にあるツールの操作方法は、私のパソコンにインストールしてあるものを前提にしています。ツールのバージョンによっては細かい所が異なる可能性があります。

ひとくちメモ:
・ソース、オブジェクト、実行ファイル
 コンピュータは、HSPのプログラムを理解できません。コンピュータが理解できる言語はマシン語(機械語)です。これは16進数の羅列です。そこで、HSPのプログラムをマシン語に変換する必要があります。この作業をコンパイルといいます。
 ソースファイル(ソースプログラム、ソーススクリプト、あるいは単にソース)は、〜.asのファイルで、コンパイルする前のプログラムです。
 オブジェクトファイルは、コンパイルした後のマシン語です。ただしまだこのままでは単体で実行できません。HSPのスクリプトエディタで「コンパイル+実行」を選ぶと、オブジェクトファイルに変換して、HSPのシステムがこれを読み込んで実行します。
 実行ファイル(〜.exe)は、オブジェクトファイルに実行に必要な機能を追加して、単体で動かせるようにしたものです。
 (ただしこの説明は一般的なソース、オブジェクト、実行ファイルの意味をHSPにあてはめてみたもので、HSPがインタープリタと呼ばれていることから、単純にマシン語に変換しているわけではないと思われます。)
 
・インタープリタとコンパイラ
 コンパイルを行うソフトウェアをコンパイラといいます。先にソースを全部マシン語に直してから実行するタイプの言語をコンパイラ型言語といいます。C言語等がそうです。
 これに対して、ソースプログラムを1行ずつマシン語に変換しながら実行するものをインタープリタといいます。そのためコンパイラ型言語に比べて実行速度が遅くなります。インタープリタ型言語にはBasicやJavaScript等があります。
 HSPもこのタイプですが、ソースを1行ずつマシン語に直しながら実行したのではとても遅いので、あらかじめソースをよりコンパクトな形式に変換して実行速度を上げる工夫をしているものと思われます。つまりHSPのコンパイルはマシン語に変換しているのではなく、コンパクトな形式に変換しているものだと思われます。
 


[目次へ][前へ][次へ] inserted by FC2 system