バタバタバタ……
 私の名はトム・ブラウン。私は今、カリフォルニア上空に出現した巨大な菱形(正確には、正八面体)の物体に、ヘリコプターによって接近しつつある。
 バタバタバタ……
 ヘリはホバリングしながら、物体の下部に開いた巨大な口へと近づいていく。
 ブゴォーッ!
 開口部付近には強力な上昇気流が発生している。こいつ! 私を吸い込もうというのだな? いいとも。では私の方から入ってやる。
 宇宙服に身を包んだ私は、ヘリとサヨナラした。私は巨大物体の意のままに、その内部へと吸い込まれた。はるか眼下で、ヘリが地面にぶつかって爆発炎上するのが見えた。
 よかった。操縦士の搭乗を拒否して。コンピュータの自動操縦にしておいて、本当に良かった。


 ウィン、ウィン、ウィン……
 こいつは私を、どこに連れていくつもりだろう。ともかく「地球人代表」として選ばれた私は、こいつの内部を調査しなくてはならない。私は調査用テスターをリュックから取り出した。
 内部の気体成分は地球と同等。気圧も地球と同等。
 私は思い切ってヘルメットをぬいだ。……なんともないようだ。私は物体内部の巨大な空間を隅々まで調べた。オオ、ゴッド! 何にもないではないか。ではこの異星人の宇宙船と思われる物体は、一体何しに地球までやって来たのだ?
 数時間後、宇宙船はどうやら目的地にたどり着いたようだった。


「アーア、ガッカリ!」
 見知らぬ異星で、タコのような宇宙人は、親切にも私にも分かる言葉でしゃべってくれるのだった。
「ゲホ! ゲホ! ゲホ!」
 宇宙船から降りた途端、私は猛烈に咳きこんだ。
「せっかく地球から新鮮な空気を運んできたのに。こいつが二酸化炭素で汚染してしまった。おい! 酸素残量はどのくらいだ?」
「はあ、あと五十パーセントです」
 部下らしき宇宙人が答えた。
「仕方ない。このまま帰すか」
 ウィンウィンウィン……
 私はこのまま地球へ帰れるらしい。
 ああ、良かった! ファーストコンタクトした宇宙人が親切で。本当に良かった!

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