ついに完成した最新鋭都市、「ニューエイジ二十二」の完成記念パーティーには、議員や、財界の大物や、その他多くの人々が集まっていた。
 舞台では華やかなダンスや、有名オペラ歌手の歌声や、そういった数々の出し物が人々を喜ばせていた。
「紳士淑女諸君、次なる出し物は、希代の大マジシャン、ホメラニ・佐山の引退記念マジックであります!」
 だがしかし、老マジシャンが登場するやいなや、場内はブーイングの嵐となった。
「引っ込め、インチキ野郎!」
「ヘタクソ!」
 若かりし頃は天才マジシャンと騒がれた彼も、今では悪し様に罵られる始末。
「み、み、皆さん、ほ、本日は私の生涯最後の大魔術、"浮揚の術"を披露致します」
 ダラダラダラダラ……。ドラムロールが鳴り響く。
 ダン!
 次の瞬間、バカにしきった人々の顔が、驚嘆と敬意のそれへと変わった。なんと全員の体が、フワフワと浮き始めたではないか!
 空中をただよいながらも、人々は惜しみない拍手を送った。
 浮遊するホメラニ・佐山の胸に、かっての栄光と、名誉が甦った。
 ああ、このために、最後にこの喝采を得たいがために、危険をかえりみず冒険をしたのだ。「ニューエイジ二十二」の中枢部に侵入し、システムをいじるという犯罪を!
 ビー! ビー! ビー!
「危険、危険、全員速やかに、退去して下さい!」

 自由落下によって無重力状態と化した宇宙ステーション、「ニューエイジ二十二」は、おそろしい勢いで地球に落ちていった。

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