霊の物理学的解明 (2005.3.15)

 前に書いた水晶玉による幻だが、入眠時幻覚とは別の、物理学的な解釈もできそうだ。というのも、幻覚で説明するには成功率が高すぎるように思えるのである。ムーディが相当数の学生やボランティアを被験者に何度も実験を繰り返したところ、ほぼ2人に1人は何かを見たそうだ。幻覚って、そんなに高い確率で見られるのだろうか。この話を聞いた立花隆は自分自身、娘、担当編集者でやってみて3人とも見たという。

 プラスティックやガラスや水晶の球体に照明が当たると、灯りが映る。これをレインボー散乱という。この実験はろうそく1本だけの真っ暗な部屋で行うので、幻の正体は水晶玉に映ったろうそくの灯りだとも考えられるのだ。レインボー散乱というのが具体的にどんなものか調べようとしたが、残念ながら検索しても分からなかった。が、占い師が水晶玉を指して「霊が映っています」と言えば素直な人は信じてしまうくらいだから、相当幻想的な像なのだろう。

 立花隆は、何かの生物の受精卵が大きく成長して、卵膜の内側で赤い血液が拍動している状態を見た。これをろうそくの灯りとは考えにくいので、入眠時幻覚だと思う。が、担当編集者が見た小さな魚と、娘が見た揺れ動く人の腕はろうそくのレインボー散乱じゃないだろうか。

 幻覚ではないのなら別に見たくもない。3万出さなくてよかった。どうやら透明感があるだけではだめで、球体でなければいけないようだ。道理で弁当のふたでは見られないわけだ。


 幽霊を見たという話に対しては幻覚だとしか言いようがないのだが、物理学的な説明がつけられる心霊現象もある。

(1)ポルターガイスト

 1991年、東大阪のある家で真夜中、自動開閉するシャッターがひとりでにガタガタと音をたてて開いた。この家は新築したばかりの工場と密接していた。その刺しゅう工場ではパソコンが次々と壊れ、棚に山積みされていた金糸銀糸が発火した。

 何らかの原因で工場内に発生した高周波が繰り返し反射され、干渉のため強めあい、もとの高周波の数万倍の強度に達した。この場合電気、電子機器の異常が発生する。早稲田大学理工学部大槻義彦教授は、プレハブ内に時計、テレビ等の電気機器を設置し、子供用の晴れ着(金糸の刺しゅう)を壁にかけ、高周波を送り込んだ。途端に電気機器は誤動作し、晴れ着は燃え上がった。この再現実験は大阪地裁に採用された。

 岐阜県のある団地でポルターガイストが起こるという。

  • 第一は怪音。ピシッピシッ、ドーンドーン等。
  • 第二は怪振動。食器戸棚が開き、食器が飛び、下駄箱のドアがひとりでに開き、玄関の鍵が動いた。

 団地は鉄筋コンクリートだが、部屋の内部の構造はお粗末で、世にもまれな安普請であるそうだ。怪音は生活音や、ベランダの隣の部屋とのしきりとなっている鉄板が熱膨張して出た音だという。快音が発生すれば低周波も発生する。この音波に共振する部分があれば、異常な振動が起こる。また上下水道の配管の工事の具合によってはこれに定常波が発生する。

(2)火の玉

 アメリカのマーファ、ヒューストンではよく火の玉が現れ、火の玉の名所となっている。

 飛行機や車の前照灯である。車の場合は5キロ、飛行機の場合は10キロ以上離れると複数の前照灯は1つに見える。飛行機や車が方向転換することで突然光体は消失する。これは仮説ではなく、大槻教授がマーファ、ヒューストン、その他たくさんの火の玉の事例を観測、理論計算、実験、コンピュータ・シミュレーションなどをやった挙句の結論だという。

(3)紫外線カメラに写った幽霊

 テレビ朝日が(1)の幽霊団地から生中継を行った。ナマで特番の間に幽霊を送りたい一心から、最後には紫外線カメラに切り換えた。すると、とあるお宅の台所あたり、壁の隅に高さ1メートル、幅30センチぐらいの、白くうっすらとしたもやが写った。

 紫外線カメラに写ったとすると、その幽霊は紫外線を出しているはずである。そのためには幽霊は1万度に近い体温がなければならない。人間の体温は40度もないがそれを維持するためにはエネルギーを補給しなければならない。いったい幽霊は何を食えばそんなエネルギーを得られるのか?
 照明から出るわずかな紫外線がテレビの撮影クルーのタバコによって散乱されて白いもや状に写ったのだという。

(4)こっくりさん

 こっくりさん(欧米ではテーブル・ターニング)のやり方にはいろいろなバリエーションがある。欧米では3人の人間が円形テーブルに手をのせ、「これからいろいろ質問をするので、イエスなら1回、ノーなら2回テーブルの脚で床を叩いて下さい」などと神との契約をする。日本ではテーブルが普及していなかったので組んだ竹の脚の上におひつのふたを乗せ、その上に布をかぶせたものを使った。

 欧米では科学者マイケル・ファラデー、日本では井上円了等が解明を行っている。結論はだいたい似たようなもので、無意識の作用によるものだという。自分ではじっとしているつもりでも、「こういう答をしてほしい」という思いが無意識のうちに腕を動かしている。特に日本の装置は不安定であり、一人がわずかでも動かせば他の2人に影響を与え、そういうことを繰り返すうちにやがて大きく動き出すことになるという。

(5)水面に立つ幽霊

 小学校5年生の夏休み、北野浩一君(仮名)は友達3人と肝試しをすることになり、夜の学校へ向かった。コースを決め一人ずつ校内を回ることにした。浩一君がプールの手前に差し掛かった時、目の前に何か白いものが映り、プールの方を見ると水面に和服を着た女性が立っていた。

 冷たい水の上に暖かい湿った空気が流れると、空気の温度が下がるため含まれていた水蒸気が露点を越えてしまうので霧が出現する。この現象によって水の表面付近にだけ発生する霧を移流霧という。和服の女性はブロッケン現象だと考えられる。ブロッケン現象というのは、登山をした時に雲海に大きな自分の影がうつり、その周りに光輪が現れる現象である。自分の影が和服のように膨らんで霧にうつり、光輪が美しい色合いに見えた可能性が高いといえる。

(6)霊界からの通信

 1998年11月18日、秋田県男鹿市の女子高校生が、テレビをつけながら受験勉強をしていた。疲れから眠り込んでしまい、深夜2時に目を覚ますとテレビはついていたが放送は終了していた。テレビを消そうとした瞬間、突然テレビから亡くなった祖父の声が聞こえ、再びノイズ映像に戻ったという。

 経済産業省生命工学工業技術研究所の倉片憲治博士によると、テレビの放送終了後に流れるような単純ノイズ音を、長時間聞いていると別の音や言葉に聞こえることがあり、それは「情景分析」という聴覚の働きによるものだという。例えば、「あ……と……」という言葉を聞いた時、聞こえていない部分を想像で補い「ありがとう」という一つの言葉として認識するのだ。放送終了後のノイズにはあらゆる種類の周波数が含まれているため、人が勝手に意味のある音として推測したと考えられるのである。
 また、1998年11月頃にはしし座流星群が出現した。地球に落ちてくる流星は大気圏に突入すると、空気の分子と衝突して双方から電子が飛び出す。そのため流星が通ったあとはプラス、マイナスの粒子からなる層ができ、電子密度が高いため電波を反射して電波散乱を起こすことがある。この層に中国のテレビ番組が反射して混信したとも考えられる。


 こういうのは、まだいくらでもありそうだ。まあ、こんなふうに科学的解明を行った事例を一生懸命集めなくても、「今の時代、幽霊目撃談を本気で信じる大人はいない」の一言で済む話なのだろうが。特に、霊能者が行う霊視や心霊手術を信じてしまう人は、霊感商法にころりと騙されてしまう可能性大なので絶対信じてはいけない。全部手品である。この間書いたリーディングは、別に細木数子に限らず占い師や霊能者が一般的に使う手らしい。

 上に書いたようなものではなく、稲川淳二やほん怖が語るような怪談は、物理学的には説明がつけにくい。第一嘘か本当なのかをどうやって判別したらいいのだろう。ぜひ稲川淳二に嘘発見器を装着して怪談をしゃべらせてほしい。


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